ATENAは、今回で8回目となる『ATENAフォーラム2026』を会場での参加とオンライン参加のハイブリッド方式で2026年2月19日(木)に開催しました。
当日は、ATENA会員である原子力事業者、メーカー、原子力関係団体の方々に加え、原子力規制委員会や経済産業省などの関係行政機関、原子力立地自治体、報道機関各社、一般公募などの方々に、会場またはオンラインで約400名のご参加をいただきました。
ATENAとして、広く皆さまにフォーラムの様子をご覧いただけるよう、本ウェブサイトに動画と発表資料、ならびに発言の骨子を掲載いたしました。
フォーラムの動画はこちら(ATENA You Tube チャンネルへ)
■日 時 : 2026年2月19日(木) 16:00 ~ 17:50
■開催形式: 会場およびZOOM Webinar を利用したハイブリッド開催
■プログラム
1.開会挨拶
2.来賓挨拶
3.基調講演
4.パネルディスカッション
5.閉会挨拶
※ATENAフォーラム2026のプログラムおよびプレゼンテーション資料はこちら
1.開会挨拶
(加藤 顕彦 ATENA理事長)
<挨拶の骨子>
・原子力エネルギー協議会(ATENA)は2018年7月の設立から7年半が経過し、本フォーラムは8回目を迎える。
・規制当局との対話については、この1年で約30回の公開会合や技術的意見交換を実施し、コミュニケーションの実績を積み上げている。最近では、運転中保全(OLM)の実用化に向けた実証試験や、革新軽水炉の導入に向けた許認可の予見性を高めるための論点整理を規制当局と進めてきた 。
・組織体制の強化としては、2025年11月に「廃止措置運営会議」を設置し、運転中プラントのみならず廃止措置や廃棄物処理の課題にも対応を進めている。
・また、2026年4月以降、地震・津波などの土建関係の体制(理事・技術スタッフ)を強化する予定。
・さらには、組織基盤を強化し持続的な活動を行うため、2026年4月から一般社団法人へ移行し、会員の拡充も図る予定。
・本日のフォーラムは「原子力の持続的活用に向けた関係機関の連携強化」をテーマに掲げている。第7次エネルギー基本計画や電力需要の増大により原子力の重要性が高まる中、人口減少に伴う人材確保や新技術への対応には、関係する機関同士の連携が不可欠。
・中部電力の耐震評価不正事案を重く受け止め、第三者委員会の報告を待たずに基準地震動設定プロセスの明確化などの改善策を検討し、産業界全体の信頼回復に努める所存である。
・本日のフォーラムを通じて、産業界の安全性向上活動をより強固なものにすることを目指していく。
2.来賓挨拶
(長﨑 晋也 原子力規制委員会 委員)
<挨拶の骨子>
・中部電力浜岡原子力発電所の審査において、耐震性の根幹に関わる基準地震動策定の不正が発覚した。これは規制当局との信頼を損なうだけでなく、被規制者全体に波及する深刻な事案である。規制委員会は厳正に対応するとともに、業界全体の自浄作用や取り組みを注視していく。
・ATENAが掲げる「規制当局との信頼関係構築」には、継続的かつ積極的な意見交換が不可欠である。相手から信頼されるためには、まず自らが相手を信頼すべきである。お互いを信頼しあうためにも、コミュニケーションをしっかり重ねていこうという、今の両者の意識を維持していくことが大事。
・世間からは、規制当局と事業者は敵対関係や上下関係にあると見られがちであり、対話そのものが無駄だと思われる風潮もある。また、過去には福島第一事故の責任を規制当局に転嫁する傾向や、事業者に対する不信感も存在した。しかし、こうした古い対立構造に縛られず、令和の時代に即した新たな関係性を築く必要がある。
・ATENAは自主的な安全対策で高みを目指し、規制委員会は国民の安全と環境保全を使命としている。規制される側と規制する側は、一見すると対立する立場に見えても、「原子力利用における安全確保をより高い水準へ引き上げる」という最終的な目的は共通している。両者は、高い目標へ挑戦する「同じ志を共有する者同士」である。
・信頼関係の構築はATENAに限った話ではなく、加盟する各事業者がCNO意見交換会などの場を通じて規制委員会との対話を深めることが求められる。個々の事業者が規制当局との信頼を積み重ねることこそが、日本全体の原子力施設の安全性を向上させるための「一番重要な鍵」である。
・技術の進展に伴い、革新軽水炉(建替原子炉)などの新しい規制ニーズが生まれている。規制委員会の第3期中期目標においても、事業者の取り組みや国内外の動向を的確に捉えることが明記されている。これらの変化に適切に対応するためには、ATENA等の関係機関との綿密な連携が不可欠。
3.基調講演
(マリア・コーズニック 米国原子力エネルギー協会(NEI)会長)
<講演の骨子>
・AI、電化、先進製造技術により日米の電力需要は急増している。米国のデータセンターだけで、電力需要が3倍、日本も今後10年で5%以上の電力需要の増加が見込まれる中、24時間365日利用可能なクリーンで大規模な電源が不可欠である。米国では官民ともに、原子力こそがこの課題を解決する不可欠な手段であると認識されている。
・トランプ大統領の署名による4つの大統領令に基づき、NEIの提言を反映した大規模な規制改革が進んでいる。これには1,000件以上の旧式な規制の改善が含まれる。また、マイクロ原子炉の早期臨界を目指すパイロットプログラムの進展や、DOE原子力局への予算増額など、原子力に対する超党派の強い支持が具体的な成果を生んでいる。
・米国では既存炉の95%以上が80年運転を想定し、出力向上や再稼働計画も加速している。新設炉は今後15年で2,300万kW以上の容量追加が見込まれる。さらに、メタ社などのIT企業が独自の野心実現のために原子力へ巨額投資を行っており、民間主導の新たな市場形成が顕著になっている。
・2050年までに37万5千人の労働者が必要と予測される中、教育機関や労働組合との連携を強化している。大学コンソーシアムとの「アカデミックロードマップ」策定や、建設業における実習プログラムの拡大が進んでいる。未来の有能な人材を確保し、最適化された教育を提供することが不可欠な課題である。
・原子力スタートアップ企業への約30億ドルの民間投資確保や、日米首脳間での数十億ドル規模の投資合意など、資金調達の機会が拡大している。SMRプロジェクト等には日系企業もサプライチェーンパートナーとして参画しており、金融業界や国際的な投資家との協力が、プロジェクトの実現を強力に後押ししている。
・ニュースケールパワーへの日本企業の投資参画など、具体的な提携は既に始まっている。国や視点は違えど、日米は「安全で信頼性の高いクリーンエネルギーの未来」という共通のゴールで結ばれている。今後もあらゆるステークホルダーと連携し、新たな協力の道を切り拓いていくことを期待する。
4.パネルディスカッション
テーマ:原子力の持続的活用に向けた関係機関の連携強化
モデレータ:斉藤拓巳 東京大学大学院 教授
パネリスト:阿部弘亨 東京大学大学院 教授
マリア・コーズニック 米国原子力エネルギー協会(NEI)会長
長﨑晋也 原子力規制委員会 委員
松本純一 ATENA 理事
<発言の骨子>
(論点の提示:松本理事)
・原子力の持続的活用に向けて、課題は山積している。限られた人、限られた時間の中でこれらの課題を解決するには、関係機関が、合理的、効果的、かつ効率的に課題に取り組むのであるという共通認識が重要。そのために、関係機関の連携が必須であり、相互の対話が重要。
・相互の対話を有意義なものにするためには、何をどうするか、WhatとHowを掘り下げる必要がある。Whatについては、PRAによってリスクの高いものから取り組む、規格基準の活用拡大などが有効。Howについては、あらかじめ目標や定義などを十分に設計したプラットフォームの設置が有効と考える。
(話題提供:阿部教授)
・事故耐性燃料(ATF)について、関係者を集めたプラットフォームを形成した事例を紹介する。
・燃料の開発には、技術成熟度に応じた開発段階があり、基礎研究、応用研究、基盤研究が同時に進行する。これらの段階を担う主体が横断的に連携して、新しい燃料の実装に向けた知見のフィードバックが適切に行われる体制を作った。
・福島第一の事故の前は、ステークホルダーが独立して取り組み、相互の知見のやりとりがなかった。このプラットフォームでは、ステークホルダーの境界を越えて違う人たちと協力しなければいけない。
・プラットフォームを組織することによって、ATFの早期実現、新技術の創出、人材の育成、それらをオールジャパンでマネージしていくことによって、国内で導入インセンティブを高め、ポジティブ・スパイラルを作ることが目標。
~組織にとって、連携とは何を意味するか。現状の連携の問題点は?(斉藤教授)
・規制側と被規制側で、「おかみ」と「しもじも」という意識がどうしても抜けないという、意識の問題がある。また、方法の問題としては、審査会合や面談というプロセスでは、事業者の立場からすると、やはりハードルが若干高いと感じる面がある。(松本理事)
・連携の目的は、我々は安全に原子力発電所を運営したいということがあり、プラントメーカー、工事の発注先との連携もある。(松本理事)
・規制委員会の立場から見た連携は、最新知識の共有、お互いが何を目指そうとしているのかという考え方の共有がある。(長﨑委員)
・「敵同士なんですか」「お上と下々なんですか」というのは、大学生から聞いた。なぜそうなっているのか、考える必要がある。一方で、規制機関として、独立と中立、透明性は、守らなければいけない最後の一線であり、そこをいかに守りながら、コミュニケーションしていくか、まだ我々も模索している。(長﨑委員)
・新しい技術が開発される時、お互いが知識を共有することによって、どのような規制が最も合理的なものになるのか、考えることができる。(長﨑委員)
・アメリカでも、ステークホルダー間の意識のずれはあった。1970年代、80年代には、行ったり来たりがあった。今は、非常に健康なダイナミクスになっている。規制と産業界の間での信頼は、当たり前に出来上がるものではなく、毎日毎日、問題を解決したり相互にやり取りする中で、信頼を勝ち取っていくしかない。(コーズニック会長)
・ATFプラットフォームでは、参加する皆さんの意見をしっかり聞いて、どういうことをやりたいのかという熱意をお互いに共有することから始めた。実際に立ち上がるまで1年以上かかった。(阿部教授)
~どのような分野で連携していくか?(斉藤教授)
・人材育成の分野が考えられる。高校生、大学生などの若年層に、どうやってチャレンジしたいと思ってもらうか。それから、企業の中堅層やベテラン層の知見の継承も課題。(松本理事)
・規制庁にとっても人材育成は大事なテーマ。ただ、原子力に絞るのは意味がなく、大きく理工系といった見方が必要。炉物理だけでなく、化学、地学など、いろんな分野の人が関わる。(長﨑委員)
・会話のレベルを一段上げて、視点を変えたい。原子力はグローバルな話である。日本でどうなのか、というのはほんの一部である。もっと全体像を見て、日米、もしくはもっと大きな単位で連携を考えませんか?30年前の原子力産業界とは全く様子が変わっている。新しいタイプの人材が必要。例えば、金融業界とも連携しないといけない。一緒に幅広く連携することで、世界に何をもたらすことができるか、サプライチェーンや設計の分野で、どんな連携ができるかを考えたい。日米が協力することによって、2プラス2が4ではなく5とか10になるような世界が作れる。(コーズニック会長)
・さまざまな国があり、多様な人材がある、そういった大きなピクチャーの中で考えるべきという貴重なご意見。目からうろこ、少し改めて考えさせられるご意見だと感じた。(斉藤教授)
~どうやって連携するか、Howの部分はどうか?(斉藤教授)
・関係者を集める時に、まずは、共通の目標や認識を持つことが重要。それが最初に共有できたら、その後はうまく行くのではないか。(松本理事)
・最初の入口で、問題意識をみんなが共通で持てることが重要。その上で、規制委員会としては、どうしても、透明性、中立、独立性をいかに担保するのか、これからも問い続ける必要がある。(長﨑委員)
~連携をファシリテイトするような仕組みは?(斉藤教授)
・NEIは、まさにそのためにある組織。多くのステークホルダーを集めて、対話を始める場となっているのがNEIである。4つの大統領令を実現させていく上で、かなりのボリュームの変化が起き、スピードも速くなっている。そこで、やはりコラボレーションが課題になる。お互いを理解しあって、コミュニケーションを取らないと進まない。これは、米国に限った話ではなく、この変化が世界的にもどんどん進んでいく。(コーズニック会長)
・こういった課題に対応するには、友達を作ることが大事。アメリカにとっては日本が大事な友達である。道のりを共に歩んでいかないといけない。(コーズニック会長)
・ATFプラットフォームで2つの課題を克服した。一つは知財の問題。これは、オープンにできる情報だけを扱うことにしたことと、知財に関する誓約書を出してもらって、解決した。もう一つは、参加する人は、情報を持ち帰るだけではダメで、必ず意見を言ってくださいと頼んだ。それに合意できる人だけ、参加してもらった。(阿部教授)
・こういった連携の最初のプラットフォーム、土台になることが、ATENAの存在意義だと思っている。スモールATENAとラージATENAという言い方をしており、ラージATENAは、会員企業である電気事業者、メーカー、関係団体の総称。設立当初から、ラージATENAで連携する活動としており、それを今後、一層強固にしていきたい。また今後、会員企業をより多くして、原子力産業界の裾野を広げて諸課題に対応していく。カウンターパートである規制委員会、NEIとも一緒に歩んでいきたい。(松本理事)
5.閉会挨拶
(片岡 秀哉 ATENA理事)
<挨拶の骨子>
・原子力を取り巻く環境は、多くの課題と可能性を内包している。複雑で高度な課題に対応するためには、業界や立場の違いを超えた対話と協力がこれまで以上に必要になる。
・ATENAが、連携を促進する組織として、諸課題の解決に貢献していきたい。